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宇宙欲

なんの因果か、ぼくの周りには宇宙好き(宇宙オタクと言ってもよい)がたくさんいる。

(ちなみに断っておくがぼくは宇宙には取り立てて興味はない)

 

彼らは口々に言う。

「宇宙に行きたい」と。

宇宙に行けるのならば返ってこられなくともよいらしい。

 

未知なる場所に行きたいと思うのは理解できないわけではない。

 

しかしながら宇宙という場所は、

・酸素がない

・重力もない

・宇宙線まみれ

と、地球上とは全くもって違った環境であり、よほどの準備や装備をしていかないと「即刻死ぬ」場所である。

 

好奇心が旺盛であるにしてもいささか常軌を逸している。

だが、それでも宇宙に行きたいというのを、彼らは「宇宙欲」という。

人間の食欲や睡眠欲、性欲と同様、彼らには「宇宙欲」があるらしい。

 

ところで話を変える。

猫好きの方はご存氏かもしれないが、トキソプラズマという単細胞の原生生物がいる。

いわゆる「寄生虫」である。

彼らは、猫の消化管内でのみ有性生殖ができる。

だが、ちょっと特殊なことに、トキソプラズマが成長するのは猫を天敵としている「ネズミ」の体内である。

 

その生活環を説明すると、

 

1.

有性生殖によって発生したトキソプラズマの卵(接合子嚢という)は猫が輩出した糞に交じって外に出る。

 

2.

地面に落ちている餌をあさるネズミがに猫の糞に触れる。

そうすると、接合子嚢がネズミの体内に入り、成長する。

 

3.

トキソプラズマに感染したネズミを猫が食べる。

 

4.

猫の消化管内に入り込み、有性生殖する。

1.に戻る。 

 

ここで一点、疑問が出る。

通常、ネズミは猫を避ける(食べられてしまうから)。

しかし、トキソプラズマに感染したネズミは猫を怖がらなくなるという。

それどころか、猫の前に進んで姿をさらすようになる。

トキソプラズマが自身の繁殖のために、感染したネズミを操るからだそうだ。

 

ゾッとする話ではあるが、このような例は結構ある。

例えば、ハリガネムシという生物がいる(うねうねする髪の毛みたいなやつ)。

彼らは水の中で有性生殖するのだが、生育するまでにいくつかの生物に寄生する。

幼虫→水中を泳いでいるボウフラ(蚊の幼虫)に感染→コオロギが蚊を食べる→コオロギに感染→水中に戻って有性生殖、という流れである。

通常、この生活環には問題がある。

普通、コオロギは水場には近づかない(泳げないから)。

ところが、ハリガネムシに感染したコオロギは、水の中に飛び込む(結果的に彼らはおぼれて死んでしまう)。

これも寄生体(ハリガネムシ)が宿主(コオロギ)を操るからである。

 

といったところで、話は「宇宙欲」に戻る。

 

通常、人間という生物は地球上に生きているのであって、宇宙空間には行かない(死ぬから)。

しかし、どうしても宇宙に行きたくてたまらない、という人がいる。

もしかしたら、そういう人は「宇宙に向かう必要のある何か」に感染していて、操られているのかもしれない。

 

では「宇宙に向かう必要のある何か」とは何だろうか。

宇宙に行きたがるから、地球上の生き物でない可能性が高い。

そんなものがいるとしたら、いつ地球に来たのだろう。

 そしてどこから来たのだろうか。